【2018年版】初心者・復帰勢におすすめするミリタリーPCゲーム5選【ストラテジー編】

2018年11月現在販売されているミリタリーものストラテジーゲームの中から特におすすめできるものを5作品選んで紹介します。
FPSなどのアクションゲーム編についてもそのうち書きたいと思っています。
ミリタリーもののゲームがやりたい、好きだ、という方は多くいると思いますが、ストラテジー(戦略)というジャンルは近年作品数が多くはない上に当たり外れが大きく、初心者の方が買うだけ買ったものの煩雑さに挫折して積みゲーになってしまうという話もよくあります。
当記事ではこれからストラテジーものに手を出してみよう、或いは10年ぶりくらいにまたやろう、と思っている方をメインターゲットに、半ば中毒者のようにミリタリーものゲームをプレイしてきた筆者が、これなら外れないと感じたゲームを紹介します。
ゲームの特徴概要と筆者が感じたプレイの雰囲気を記述するので、自分に合いそうなゲームを是非見つけてみてください。

選定基準

選定の基準ですが、
  • グラフィックやUIが新しい(古くても前世代くらい)
  • プレイヤー人口が多く、日本語での情報収集が容易
  • ゲームボリュームが充分で、やりこめる
  • 20世紀以降の時代設定(それ以前は別の機会に)
  • ミリタリーオタクが納得できるゲームディテール
といった点を重視しています。
グラフィックが良くなくても面白いゲームは勿論沢山ありますが、今回はとっつき易さを重視して、古い名作やインディーズのものはまたの機会に扱いたいと思います。
また、ゲームコンセプトやデザインも重要ですが、個人的にこの手のジャンルは「ハマった時にやりこめる」ボリュームが大事だと思っているので基準の一つとして重視しました(たとえ有名タイトルの続編でもボリュームが足りない作品は沢山あります)。
なお、古くからあるテーブルゲームのデジタル版や、その進化系にあたるようなものは含んでいません。どちらかというとPCで複雑な処理をしてこそ実現できる、というようなゲームを選びました。

現代戦RTSの決定版 『Wargame: Red Dragon』

画像はSteamページより

特徴

  1. 陸海空入り乱れる現代戦を包括的に描いた貴重なゲーム
  1. 自分だけのデッキを構築できる奥の深さ
  1. 信じられないくらい沢山の国・兵器が登場

概要

  • 発売年: 2014年
  • 時代設定: 現代戦
  • 規模: 戦術級
  • ゲームモード: シングル及びマルチ(最大10v10)。シングルキャンペーン、AI戦COOPあり
  • 日本語の有無: 公式日本語表示あり
  • Steam Workshop: 非対応
Playstationでも販売されていた『R.U.S.E.』で有名なEugen Systems社から発売されているWargameシリーズの最新作がこの『Wargame: Red Dragon』です。ジャンルとしてはRTS(リアルタイムストラテジーゲーム)に当たりますが、リソース管理の要素は少ないので戦闘に集中できます。現代戦をテーマにしたストラテジーゲームは数が少ないながらも幾つか販売されていますが、諸兵科連合での戦いを描いた作品としては圧倒的なボリュームと完成度だと思います。
公式紹介文にもあるように17の国、1450以上のユニットが登場します。アメリカのM1エイブラムス戦車やロシアの戦闘機Su-27、ドイツの対空戦車ゲパルトなど、実在の現代兵器が入り乱れて戦う様はまさにミリタリーゲームという感じです。
大きな特徴としてユニットを選び、決められたコストポイントの中でカードゲームのようにデッキを組んで戦うというデッキシステムがあります。これによって機甲師団や空挺師団など、プレイヤーが自由に自分の部隊を編成することができます。
過去作からの進化点としては海軍・海上部隊が新要素として加わったほか、日本、中国、北朝鮮、オーストラリアといった極東アジア・オセアニアの勢力が追加されました。年代も少し新しくなり、90式戦車など90年代初頭のユニットが登場しています。有料DLCですがイスラエルとオランダも追加可能です。
画像はSteamページより

プレイの雰囲気

UIなどは公式で日本語化されているので英語が苦手な方でも問題なく遊べると思います。それからこのゲームのユニットは指示を出した時に母国語で喋るのですが、自衛隊員は海外のゲームにありがちな怪しい日本語ではなく、流暢な日本語で冗談や皮肉を言います。ゲーム進行に直接は影響しませんが筆者が感心した点です。
2014年と少し古いゲームですが、グラフィックは沢山のユニットを描画するゲームとしてはかなりいい部類です。拡大して戦闘を眺めるという楽しみ方も充分可能です。その割には要求スペックが非常に高いというわけでもないので、よくできているなあという印象でした。
シングルプレイヤーキャンペーンでは実際にユニットを操作する戦術フェーズのほかに、各師団を操作して作戦を遂行していく戦略フェーズのようなものがあり、プレイヤーは部隊の損耗に頭を悩ませながらどこに戦力を割くかを決定し、戦術フェーズへと進んでいくことになります。シナリオもいくつかあるので、これだけでも十分遊べます。
イギリスキャンペーンの様子
ほかのシングルプレイヤーモードとしてはAI戦(所謂スカーミッシュ)があります。自分で作ったデッキを試したり、AIのデッキを北朝鮮にして自衛隊vs朝鮮人民軍の対決を眺めたり、色々な遊び方ができると思います。
マルチプレイヤーモードでは他のプレイヤーと1v1から最大10v10の白熱した戦いが楽しめます。いくつか勝敗決定の方法がありますが、一番遊ばれているのはセクターを保持した数と時間で勝敗が決するコンクエストモードだと思います。
RTSゲームなので対人戦となるとやはりそれなりの操作量を要求されますし、セクターの保持数がコストポイント収入に直結するので、偵察の仕方などで差が開いてしまうと上級者には敵わないかもしれません。近いレベルの人同士が当たるマッチングシステムもあるのですが、Rankマッチを回している人が少ないので機能しているとは言い難いです。とはいえSteamChartによれば最近のアクティブ人口はピーク時で1000人ほどなので、一定程度は初心者と対戦する機会もあると思います。
マルチプレイヤーのハードルを高く感じるようであればシングルだけでも楽しめると思いますし、フレンドと対AIのCOOPを遊んだり、身内対戦するのも遊び方の一つだと思います。
デッキ構築システムの面白い所として、選ぶ国によってコストポイントの上限が変わったり(例えばNATO軍を選択するよりもイギリスのみを選択したほうが上限が増える)、1980年以前のユニットのみや機甲師団で利用可能なユニットのみ、という縛り的な選択でもコストポイントの上限が増えるという仕様があり、普通に考えれば複数国の連合軍の方が強くなるところを上手く調整しています。全体を見ても現在のゲームバランスは対人ゲームとして充分な状態に整えられていると思います。
戦車を対戦車ヘリで攻撃したり、制空戦闘機同士で対決したり、特殊部隊で市街地を制圧したり、対空車両を対レーダーミサイルで撃破したり、そんな現代戦好きならまずはこの『Wargame: Red Dragon』をプレイしてみることをおすすめします。

Wargameの二次大戦版『Steel Division: Normandy 44』

画像はSteamページより

特徴

  1. Wargameの第二次世界大戦版
  1. 史実の西部戦線に参加した師団が登場
  1. 新要素「フェーズ」と「戦線」で更に熱くなった駆け引き

概要

  • 発売年: 2017年
  • 時代設定: 第二次世界大戦
  • 規模: 戦術級
  • ゲームモード: シングル及びマルチ(最大10v10)。シングルキャンペーン、AI戦COOPあり
  • 日本語の有無: 有志日本語化あり
  • Steam Workshop: 対応
Wargameの開発元であるEugen Systemsが昨年発売した第二次世界大戦を舞台にした作品です。デッキやユニットパラメータ等基本的なシステムは踏襲しながら、終盤に向けて加速する戦闘、戦線をめぐる駆け引きを追加することでさらなる進化を図っています。
今作ではタイトルにあるようにノルマンディー上陸作戦以後の西部戦線が描かれ、デッキは国ではなく実在の各師団をもとに編成します。アメリカの101空挺師団やドイツの第17SS装甲擲弾兵師団といった師団が、史実に基づいた編成で登場します。ユニット数は400以上と公式は謳っています。
教導装甲師団”パンツァーレーア”の編成例。画像はSteamページより
新たに加わった要素が、「戦線」「フェーズ」の概念です。
従来のWargameにおける一番人気のコンクエストモードではセクターを保持した数と時間によって与えられる勝利ポイントで勝敗が決していましたが、Steel Divisionでは戦場全体の獲得面積に応じて勝利ポイントがもたらされます。両軍のユニットの中間にあたる場所に「戦線」が置かれ、双方のユニットの勢力に応じて前進・後退します。プレイヤーはユニットを侵攻させ、敵ユニットを撃破することで前線を押し上げ、勝利を目指します。より広い面積を獲得すればするほど勝利に必要なポイントも早く溜まっていきます。
画像はSteamページより
次に「フェーズ」についてですが、戦闘にABCの各フェーズが設けられました。Aフェーズから開始し、時間によってB、Cへと進行していきます。強力な戦車や航空機ユニットなどはたとえコストポイントが足りていても、解禁されるフェーズまで待たなければならなくなりました。
またセクターの廃止に伴ってポイント収入は各師団ごとに固定となり、こちらもフェーズを経ることで変化します(例えばパンツァーレーアの収入はABCの順に75、95、150/min)。
こうした変更で、終盤を見据えてどの部分に戦力を割くのか、という選択が解りやすくなり対戦ゲーム性は高まっていると思います。
また戦闘のシステムも少し変わっており、装甲車両は貫通した場合弾薬庫誘爆などで一発爆散するようになったり、ノルマンディーを意識してか森やボカージュを車両が通過できないようになっていたりします。加えてその地点から射線がどこまで通るのかを表示する機能ができたので、射線管理がやりやすくなりました。ほかにも退却システムの追加など、細かい部分で変更があります。
公式日本語はありませんが、Steam Workshopに対応しているので有志の方が作成した日本語化MODで日本語化が可能です。

プレイの雰囲気

各モードについてはWargameに準じますし、変更点についても概要の方で述べたので、ここではゲーム性について感じた点を伝えたいと思います。
Wargameは非常に完成度が高く、自由度も高い一方で、特に対人戦においては過度にゲーム的な戦略(開幕ヘリラッシュや敵陣地要所への開幕砲撃特化など)がまかり通ってしまう場面があり、「戦争ゲーム」を楽しみたいプレイヤーからすると非現実的すぎて楽しめないという印象を受けることもありました。
Steel Divisionではフェーズや戦線というゲーム的な縛りをあえて加えることで、そうした要素をかなり減らすことに成功したように感じられます。
ただ、二次大戦テーマということもあってWargameよりもユニット移動などゲームの展開が遅くなっているので、全体を把握した上で先回りして的確な判断をしなければなりません。上記のゲーム的な縛りが加わったこともあってマルチプレイヤーの難易度は相対的に上がっているかもしれません。
とはいえ個人的にはWargameがいいかSteel Divisionがいいかの議論というのは、「レオパルトとティーゲルのどちらが好きか」という議論と同じような気もするので、現代戦と二次大戦で好きな方をプレイすれば良いのではないかな、と思います。
ティーガーⅠが好きならSteel Division
Steam Chartでは最近のピークアクティブ人口が350人程度とWargameに後れを取っていますが、それは後述する魅力的な第二次世界大戦テーマのストラテジーゲームのせいかもしれません。
Steel Divisionはタイトルからも予想できたことですが、2019年に『Steel Division 2』の発売がすでに告知されており、東部戦線を舞台にソ連軍とドイツ軍の戦いが繰り広げられるようです。開発はシングルプレイヤーの強化にニーズがあると踏んでいるようで、全く新しいシングルプレイヤーキャンペーンの開発中であると発表しています。
私は史実でドイツが鹵獲したファイアフライがしっかりと独軍デッキの中に存在しているのを確認した時にとても感動したので、史実に対するその姿勢だけでもこのゲームは買いだと思っています。第二次世界大戦好きの方は検討されてみてはいかがでしょうか。

ミリタリーものRTSの王者『Company of Heroes 2』

画像はSteamページより

特徴

  1. 競技性と戦争ゲームの優れたバランス
  1. ミリタリーものRTSの中で圧倒的な人口
  1. 戦略と駆け引きの幅が広がる”ドクトリン”システム

概要

  • 発売年: 2013年
  • 時代設定: 第二次世界大戦
  • 規模: 戦術級
  • ゲームモード: シングル及びマルチ(最大4v4)。シングルキャンペーン+ミッション(Theatre of War)、AI戦COOPあり
  • 日本語の有無: なし
  • Steam Workshop: 対応
ミリタリーものRTSとしては歴史的ヒット作となった名作『Company of Heroes』の続編です。開発はAoE4を担当することがアナウンスされ話題になったRelic Entertainmentが行っています。私の知る限り、現在最もアクティブ人口の多いミリタリーものRTSです。
Company of Heroes 2(以下CoH2)の魅力はなんと言っても対人戦向けのデザインが極めてしっかりされていることです(シングルキャンペーンもそれなりにボリュームはあります)。実在の武器や兵器を題材にするミリタリーものというジャンルでは多くの場合、双方の戦力が異なります。PvPの対戦ゲームを作る場合にはこの点が非常に大きな課題となっていると思います。
フェアな戦い、競技性を重視すればリアリティやロマンが失われ(Ⅳ号戦車とT-34が同じ能力値だったらがっかりしますよね)、その逆もまた然りです。CoH2の優れた点は上記2つを両立すべく、リリース後幾度にも渡ってバランス調整を続けて、現在では連合国側と枢軸国側のユニットやアビリティが全く違うにもかかわらずほぼフェアに戦えるようになっていることです。
赤軍のT-34とドイツ国防軍のⅣ号戦車、対空戦車オストヴィント
登場勢力は連合側がソ連軍・アメリカ軍・イギリス軍、枢軸側がドイツ国防軍と西部ドイツ国防軍(Oberkommando West)の計5勢力です。それぞれが独自の特色、ユニット、ドクトリン(後述します)を持っています。なお、ソ連軍とドイツ国防軍以外でプレイするためには拡張コンテンツを購入する必要があります。対戦は所持していない陣営相手でも可能です。
CoH2の対人戦(或いは対AIスカーミッシュ)では双方が基礎歩兵と軽車両等を生産可能な自陣拠点を持った状態からスタートします。マップ上には10前後のエリアと勝利点エリアが存在し、より広いエリアと勝利点の獲得を巡って戦うことになります。資源には3種類あり、ベースとなるマンパワーの他にエリアを獲得することで得られる燃料・弾薬が存在します。燃料は車両の生産で、弾薬はグレネードや砲撃など、アビリティの使用で主に必要になります。
資源を使うことでより強力なユニットを生産できるようになる”テックアップ”(所謂時代進化。ティア4までの4段階)をしつつエリアのコントロールを握り、勝利点または敵陣の完全破壊、相手の降伏による勝利を得ることを目指して試合は進行していきます。
ゲームを通じて、プレイヤーは事前に選んでおいた3つのドクトリンの中から1つを選ぶことができます。ドクトリンは各勢力に追加のユニットや能力をもたらすもので、5つの要素から構成されます。各要素は強力な砲爆撃や通常では生産できない固有ユニットなど戦略に大きく影響するものばかりなので、相手が3つの内どのドクトリンを使用してくるのか、或いはこちらからどこで仕掛けるのかという読み合いもゲームの醍醐味です。
また、 CoH2では攻撃や移動といった指示だけでなく、ユニットごとに持つアビリティを使用して戦闘を有利に進めることができます。例えばソ連軍徴集兵は弾薬を消費してモロトフを投げることができたり、ドイツ国防軍擲弾兵は車両にダメージを与えるパンツァーファウストを発射できたり、という具合にです。
加えて本作には”Retreat(撤退)”というシステムがあります。撤退命令を出した歩兵ユニットは自陣拠点まで走って戻ります。拠点に到着するまで操作を受け付けなくなりますが、ユニットが完全に失われるとアップグレードや経験値も失われてしまうので、戦場を広く見渡し不利と見たら適切に撤退させるという判断も重要になってきます。
明白に不利な状況であれば、戦い続けてユニットを失うよりも撤退する方が賢い選択となる
他にも機関銃射撃による制圧効果や車両への部位ダメージなど、CoH2のシステムは簡単に紹介しきれないほどあるのですが、総じて言えることはPvPとしてのゲームバランス・戦争ゲーム感の双方に優れた作品に仕上がっているということです。戦車の装甲値などはある程度史実に準拠して特徴付けされている一方で、ユニットは体力性なので一撃で勝負が決することは稀で、総合的なプレイヤーの実力がしっかり結果に反映されるデザインとなっていると思います。

プレイの雰囲気

圧倒的なアクティブ人口と書きましたが、Steam Chartによれば直近のピーク人口は7000人前後となっています。これは2年前の同時期と比較しても1000人程度しか減少しておらず、CoH2の変わらない人気を示していると思います。
もちろんプレイヤー全員がマルチプレイで遊んでいるわけではありませんが、充分な人口が存在するのでマッチメイキングシステムも機能し、初心者でも同レベルの相手と当たり易くなっています。
シングルプレイヤーキャンペーンも遊べないことはありませんが、最も力が入っているのはPvPのスカーミッシュなので対人戦を遊ばないプレイヤーは対AI戦をフレンドとCOOPでプレイしていることが多い印象です。Steam Workshopに対応しているのでユーザー作成マップやMODで対戦やCOOPを遊ぶ人もいます。
スカーミッシュの内容についてはかなり奥深い戦略が用意されていて、もちろんメタ(現環境における流行りや定石)もありますがあえてメタを無視した戦略を採っても勝てる場合もあります。対人戦始めたてのうちは陣営ごとにいくつかある定石を踏まえつつプレイするほうがゲームを理解しやすいとは思いますが。
ではそうした定石をどこで学んだらいいのか、という疑問についてはプレイ人口が多いだけあって様々な手段があります。英語が主体ですが上手いプレイヤー同士の試合を実況解説している動画も数多く公開されていますし、日本語でもwikiの他日本人コミュニティがDiscordなどに存在します。初心者から世界ランカーまで沢山の人が所属しているので、一緒に遊ぶ仲間を探したい人には是非おすすめしたいところです。
CoH2には競技性をしっかり保っているからこその魅力があります。上位層の戦いでは操作量もかなり求められてきますが、劣勢の状況から仕掛けた戦術が見事にはまって勝った時の感慨はひとしおと言えます。3v3や4v4などの多人数戦はライトに遊びたい方にも対戦の楽しさが伝わるような仕上がりになっていると思うので、そうした方にも充分薦められる作品だと思います。

二次大戦マニアも納得の出来『Men of War: Assault Squad 2』

画像はSteamページより

特徴

  1. メジャーどころからマイナーまで、個性豊かな多数のユニットが登場
  1. 装甲厚による貫通判定や歩兵の装備品アイテム化など徹底したリアリティの追求
  1. プレイヤーがユニットを直接操作可能な”ダイレクトコントロール”システム
  1. 日本軍が登場します(!)

概要

  • 発売年: 2014年
  • 時代設定: 第二次世界大戦
  • 規模: 戦術級
  • ゲームモード: シングル及びマルチ(最大8v8)。シングルキャンペーン、キャンペーンミッションCOOPあり
  • 日本語の有無: 有志日本語化modあり
  • Steam Workshop: 対応
Digitalmindsoft社がMen of Warシリーズ最新作として販売している超リアル系二次大戦RTSです。上にある画像にスーパーパーシングとカリオペが登場していることからもおわかり頂けると思いますが、これまでに紹介してきた作品のリアリティに納得いかないというミリタリーマニアの諸兄も納得のマニアックなゲームです。
戦場の規模はSteel Divisionよりもやや小さく、CoH2と同じくらい、登場勢力は英独米ソ日(!)の5カ国です。登場ユニットは250以上の車両と200以上の歩兵となっています。
画像はSteamページより
とにかくとんでもなくマニアックな作品であるということを冒頭でも書きましたが、恐らく対戦ゲームとしての限界までリアリティを追求していると言っていいと思います。明白にデフォルメされているのはマップサイズ依存の交戦距離くらいでしょうか。これ以上のリアリティを追求すると最早シミュレーターになってしまう、という一歩手前で踏みとどまっている出来だと思います。
魅力としてまず挙げられるのが兵士を一人一人操作できることや車両へのダメージ判定の複雑さです。特に車両は前後左右のような簡素な分類ではなく、ほぼ実物通りの装甲値が設定されています(例えば戦車の主砲防盾と砲塔前面、ターレットリングでは全て判定が異なります)。撃つ側の砲の貫通力によっては特定の部位でなければ貫通しないということです。加えてエンジン、主砲、ターレットリング、弾薬庫、乗員の殺傷といった細かい判定が行われるので、運悪く貫通した砲弾が弾薬庫に当たればどんな重戦車でも一撃で爆散します。また実物通り上面装甲は薄いため、重砲の榴弾でも直撃すれば戦車を破壊できるような仕組みになっています。ユニットには燃料・弾薬の概念もあるため、戦場の全てに目を配ってユニットを失わないようにする必要があります。
シングルプレイヤーモードには各国のキャンペーンがあり、それぞれ5-7つほどのミッションで構成されています。キャンペーンと言ってもストーリーらしきものはそれほどなく、限られた資源(マンパワー=MPが自動で溜まっていきます)とユニットを使って指定時間陣地を防衛したり、目標地点を攻略したりというどちらかというと単調なものになっています。一方で難易度によって敵ユニットの数や質が変わるので、彼我の各ユニットの能力値はそのままに難易度を上げるという点ではよくできていると思います。
UIは良くも悪くも昔ながらのRTSという感じです。グラフィックは使用しているエンジンがやや古いことや、モデルの一部がシリーズ前作と恐らく同じということもあってそれなりですが、登場するユニットの種類の多さにはこだわりが感じられます。歩兵は徴集兵から特殊部隊まで、対戦車砲も口径が異なるものが幾モデルも存在しますし、バニラの品揃えに満足いかなければSteam Workshopからmodをダウンロードしてカール臼砲のようなユニットを追加することもできます。
兵器の牽引や歩兵の車両への搭乗も指示できるので(タンクデサントできるということです!)、かなり自分の思い通りにユニットを動かすことができるのではないでしょうか。
砲を牽引することもできます
そしてこのシリーズの特徴としてもうひとつ挙げることができるのが”ダイレクトコントロール”システムです。文字通りユニットをダイレクトコントロールすることができるわけですが、高難易度のシングルキャンペーンやマルチプレイになると必須と言ってもいい機能になってきます。操作感としてはWASDで移動しながらマウスで狙って射撃、という感じですが、元がRTSということもあって操作のし易さはそこまでよくありません。ただ前述したような戦車の装甲の弱点部位を狙ったりできるので、ストラテジーもののゲームプレイに加えるエッセンスとしては面白いと思います。
ダイレクトコントロールの様子。地形を解りやすくするためにズームしている
ゲーム中の兵器や兵士が装備している武器はほぼ全て使用することができるのも優れた点です。AP弾の他にHEやAPCRを使い分けたり、同軸機銃を撃ったりできます。
マルチプレイは互いが撃破したユニットのポイントで競うCombatモード、ゾーン占領によるポイントを競うAssault Zoneモードなどがあります。基本的には連合側と枢軸側で別れて戦うことになりますが、設定によっては同じ勢力同士でも戦うことが可能です。後述しますがハードルは高いです。
またゲーム中には通常のMPで召喚(生産)できるユニットの他に、国の特色を色濃く反映した特殊ユニットがあります。マルチプレイヤーでは10種類のユニットをSPという使い切りのポイントで召喚できます。日本軍の通常より口径の大きい迫撃砲や、ドイツ軍のロケット砲など、戦局に影響する強力なユニットが存在します。

プレイの雰囲気

ゲームプレイは多様な兵器をあれこれ試しながら遊べるので楽しいです。特に日本軍がしっかりプレイアブル勢力として登場するのは珍しいので、日本兵の喋る少し怪しい日本語音声を聞きながら旧軍の司令官の気分に浸るのもよいでしょう。
操作性について、ユニットの経路選択などが少しもたつく場合もありますが、困ったらダイレクトコントロールがあるのでさほどストレスフルには感じません。また以前は弾薬の補給時に補給トラックのインベントリを開き、インベントリ一杯の砲弾の絵の中から必要なものを見つけ出す必要があるようなゲームでしたが、アップデートによりトラックの範囲内に居れば自動補給するようになったり、操作性の改善が行われました。
兵士のインベントリとトラックのインベントリ。燃料やダイナマイト、地雷など全て使うことができる
シングルプレイヤーモードやフレンドと身内でマルチプレイヤーモードを遊ぶのであればゆったり進めることができるので誰にでも薦められる作品だと思います。PvPを本格的にやりたい場合はかなり覚悟がいる、と個人的には思います。Steam Chartによれば直近のピーク時アクティブ人口は2800人前後と発売後最多水準ですが、modのシングルプレイヤーミッション等の人気も高いためマルチプレイにいるプレイヤーは限られています。そして、彼らの多くはシリーズを長くプレイしてきたベテランです。
私が知る限りでもマルチプレイには砲の精度を利用し、細い木などを狙って射程外の敵を撃つテクニックなどが存在しますし、伏せている歩兵の対戦車グレネードひとつで戦車が破壊されてしまうので、経験と操作量を身に着けなければ対等に渡り合うのは難しいと思います(大抵の対人ゲームはそうなのですが、特に)。それでもマルチプレイで戦いたいという方は日本人コミュニティがあるようなので、そうしたところの門戸を叩いてみるのもありかもしれません。
対戦ゲームとしてデザインされているので、バランスをとるために実際はほとんど生産されていないようなユニット(例えば四式中戦車チトや五式中戦車チリ)も登場します。リアルを追求したこのゲームのある意味最もリアルでないところかもしれません(同時にロマンポイントでもあります)。とはいえ装甲値などはあくまでリアルなので、イギリス軍の重装甲戦車ブラックプリンスなどが出てくると、日本軍プレイヤーとしてはどう対処したものか頭を悩ませることになります。
ミリタリーマニアのゲーマーが最後に行き着く場所のひとつと言ってもいいのがこの作品です。自由度の高さと細部の作り込みは、ユニットを動かすRTSの楽しさを教えてくれます。二次大戦が大好きだという皆さんには是非プレイすることをおすすめします。

大人気の戦略級タイトル『Hearts of Iron Ⅳ』

画像はSteamページより

特徴

  1. 圧倒的なデータ量に基づく唯一無二のゲーム性
  1. シリーズで最もとっつきやすく進化したUIやシステム
  1. 二次大戦のifを実現できるロマン

概要

  • 発売年: 2016年
  • 時代設定: 第二次世界大戦
  • 規模: 戦略級
  • ゲームモード: シングル及びマルチ(最大32人)、COOP(共同操作)あり
  • 日本語の有無: 有志日本語化modあり
  • Steam Workshop: 対応
ストラテジー、と書いているのに戦略級タイトルを挙げないわけにはいかないので、最早紹介する必要がないくらい有名な作品ですが選びました。歴史ものストラテジーや『Stellaris』でも知られるPradox Interactive社から発売されているHearts of Ironシリーズ最新作です。直近のピーク時アクティブ人口はなんと24000人以上という大人気タイトルです。
プレイヤーは第二次世界大戦時に存在した列強または弱小国を操作し、世界中を巻き込んだ大戦の中で世界征服や生き残りといった目的を達成することを目指します。
データの量が膨大かつゲームが複雑で始めるにあたって難易度が高いことでも知られる所謂「パラドゲー」ではありますが、今作はかなりとっつきやすく仕上がっていると思います。UIもきれいになりましたし、国家方針というプレイの方向付けをわかりやすく選ぶことができるシステムも追加されました(例えば陸軍増強、海軍増強、内政注力といった選択肢があります)。
グラフィックもHoIⅢから大幅に進化し、マップの森や市街地に戦車や爆撃機が3D描画されます。有名どころの国家指導者や軍人などもしっかり肖像画で登場するので戦略ゲームとしての雰囲気が良いです。
画像はSteamページより
また今作の特徴としてマップ上で前線や攻勢計画を描くことができます。計画を準備しておくことで、ただ攻めるよりも効果的に侵攻することが出来るようになっています。AIも完璧ではありませんがかなり賢く攻めてくれるようになったので、戦線が大規模になってもプレイの負担が少なくなりました。なにより戦争している雰囲気がとても良いです。
ゲームは1936年開始または1939年開始から選ぶことが出来ます。プレイヤーはプレイしたい国を選択し(ドイツやアメリカのような強国から、エチオピアのような絶望的状況の国まで選ぶことが出来ます)、やがては戦争へと向かう世界へ身を投じることになります。今作では大戦へと向かう世界情勢を表現するために「国際緊張度」というシステムが用意されており、スペイン内戦やドイツによるラインラント進駐のようなイベントが発生するに応じて緊張度は上昇していきます。緊張度が上昇するに伴って、各国が取ることの出来る行動の幅も広がるシステムになっています(例えば他国の戦争への義勇兵派遣など)。
ファシズムやコミュニズムが政権を握っている国家は条件を満たせば侵略戦争を行えますが、民主主義政体の国家は基本的に防御的な戦争しか行えないようになっています。このあたりは前述した国家方針も絡んでいくつか選択肢が用意されています。
国家方針画面。画像はSteamページより
ゲームにはある程度史実に沿ってAI国家が行動する設定と、よりランダムに行動する設定があります。ランダム設定ではフランスが連合国に加盟せずに独自陣営を立ち上げたりします。
どんな大国でも国力は限られているので、プレイヤーはいつ頃開戦するのかを検討しながらいつまで内政注力(工場やインフラの整備)するのか考え、陸海空のどの分野に力を割くかを考え、その中でも歩兵の質を優先するのか、数を優先するのかなど、大戦が始まるまで悩むのが楽しい時間が過ぎていきます。シングルプレイヤーモードなら時間を止めることが出来るのでじっくり悩んでも大丈夫です。各種研究や師団の編成などは戦争が始まってから急に方針変更すると無駄が大きいので、しっかりと考える必要があります(空母を沢山作ったけど旧式の艦載機しかない、といったことが起こり得ます)。
HoIⅣには明確な目的がありません。もちろんプレイヤー国家が敗北してしまえばそれで終了ですが、世界征服するまでプレイを続けても良いし、ドイツでマジノ線を正面突破することだけに情熱を注いでプレイしても良いのです。

プレイの雰囲気

やはりHoIⅣの一番の印象は初心者に優しくなった、ということです。研究や武器装備の生産調整、資源の輸入、インフラ建築、師団や艦隊、航空機の管理に戦闘計画の策定と相変わらずやることはとても多いのですが、UIの改善によって各種情報はかなり見やすくなりましたし、国家方針によってどういった方向性に進めていくのかもわかりやすくなっています。
また発売当初様々な批判があったゲームバランスや一部システムについてもアップデートとDLCが充実したことで、10年以上前の過去作ながら未だに根強い人気があるHoIⅡのプレイヤーも移住するまでの人気作となりました。
このようなストラテジーゲームにグラフィックを求めない人も多くいますが、私はグラフィックの向上でゲームプレイの質も向上したと思います。高精細なマップの上に表示される兵器や攻勢計画はプレイを盛り上げてくれます。この手のゲームはプレイヤーがいかに満足できるかが重要な要素のひとつだと思うので、この点は個人的にかなりプラスでした。
Steam Workshopに対応しているので、有志日本語化MODで日本語化が可能です。またMODも力の入ったものが沢山あり、第一次世界大戦や現代戦、Falloutライクな世界を再現したものなどが人気を博しています。ほかにも兵器を追加したり、史実にこだわったスキンに変更したりするMODが多数存在します。MODは本来自身の満足のために作ったものを他人にもおすそ分けする、という文化なのでHoIⅣのMODの多さは納得ですね。
有志日本語化MODを適用した画面
ゲームはシングルプレイヤーモードに主眼を置いて作られている感じですが、今作はマルチプレイヤーモードに一つの国を複数人で操作するCOOPのような機能も追加され、楽しみ方が増えました。私はフレンドと大日本帝国を2人操作して大本営ごっこを楽しみました。
身内でないマルチプレイヤーについてはプレイのスキルや経験も求められますが、楽しむために最も重要なのはそのマルチの空気感が合うかどうかだと思います。HoIⅣはバニラ状態では国によって力の差が明らかなので、MODを入れて出来る限り公平に競技的なプレイをするのか、それとも雰囲気重視でプレイするのか(アメリカソ連イギリスでドイツをボコボコにしたりしても楽しくないかもしれません)、その中でも権謀術数(プレイヤー間の二枚舌、三枚舌外交)プレイを許容するのかなど、そうした部分を明確に決めておかないと自分が楽しめないだけでなく最悪の場合参加者の空気が悪くなってしまうかもしれません。そこさえクリアしておけばマルチでわいわいするのも腕試しするのも楽しめると思います。
HoIⅣでは膨大なデータと緻密なディテールのもと、史実で失敗した作戦を成功させたり、日英同盟を結んでみたり、アメリカを共産主義国にしたり、歴史のifを思うがままにプレイできます。戦略級の二次大戦ストラテジーに心惹かれたならばまず、このHearts of Iron Ⅳをプレイしてみることをおすすめします。

おわりに

ここまで全部読んでくださった方も、気になる部分だけ読んでくださった方も、ありがとうございます。正直なところゲームの中身をどの程度説明するかが難しく、言葉が足りない・細かい説明が多すぎる部分があったかもしれませんが、皆さんのミリタリーものストラテジーゲーム選びの一助になっていれば嬉しいです。
ここで挙げた5作品以外にもミリタリーものストラテジーゲームは存在しますが、初めての方はこの中から選ぶことをおすすめします。とはいえ、どうしてもマイナーな東部戦線戦術シミュレーターがやりたい、などという場合もあると思います。趣味の世界では好きなことをするのが一番ですから、それも全然アリだと思っています。
もし当記事内に誤りや不明な点、あるいは「この作品が入っていないのは絶対におかしい」というご意見などある場合は、コメントなどで教えていただけると助かります。